宮城アフリカ協会(AFAM)会長 アイザック・ヤウ・アスィードウ博士
6年前、アフリカの指導者たちは、大胆な実験に乗り出しました。それは、大陸全体に分断された経済をひとつの巨大な国境なき貿易圏に編み込むという試みです。現在「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」として知られるその構想は、加盟国数において世界最大の単一市場を形成し、新たな繁栄の時代を切り開くことを約束するものでした。
2018年にキガリで署名されて以来、AfCFTAは世界的な逆風や域内の障害を乗り越え、アフリカ貿易の新時代に向けた基盤を築いてきました。しかし、その野心的な目標にもかかわらず、完全実施への道のりはまだ終わっていません。
構想から実施へ
AfCFTAは2019年5月、22か国の批准を経て正式に発効しました。その1年後、2021年1月にはAfCFTAの規則に基づく貿易が開始されました。開始時点では、多くの関税表や品目別の原産地規則が交渉中であり、象徴的な意味合いが強いものでした。しかし、この出来事は大きな転換点を示しました。すなわち、アフリカが「アフリカ域内での貿易拡大」を明確に約束した瞬間でした。
その後、原産地規則の88%以上が合意に達しました。関税オファーの交換、試験的な貿易プロジェクトの実施、現地通貨での国際決済を可能にする汎アフリカ決済システム(PAPSS)の導入など、実務的な前進が積み重ねられています。これらは一見技術的な取り組みに見えますが、AfCFTAを機能的な市場とするために欠かせない要素です。
AfCFTAが重要である理由
現状、アフリカ域内貿易は総貿易量のわずか15%にとどまっています。これはヨーロッパ(60%)やアジア(50%)と比べると極めて低い数値です。AfCFTAは、関税削減、非関税障壁の撤廃、貿易ルールの調和を通じて、その割合を倍増させることを目指しています。
さらに、AfCFTAは単なる貿易協定ではありません。工業化の推進、雇用創出、経済的レジリエンス強化のための手段でもあります。特に製薬、食料、デジタルサービスといった分野において外部供給への依存を減らすことができます。また、多くがインフォーマル経済に従事する若者や女性起業家の力を引き出す仕組みでもあります。
進展と課題
この6年間、進展は確かにありましたが、国ごとに濃淡があります。積極的に取り組む国がある一方で、地元産業の競争力低下や関税収入減少を懸念し、慎重な国も存在します。
インフラ不足は依然として大きな障害です。不十分な道路・港湾・鉄道網が貿易効率を阻害し、通関手続きも不統一です。さらに、現代貿易に不可欠なデジタル接続も脆弱です。
また、恣意的な検査、ライセンスの遅延、国境での汚職などの非関税障壁(NTBs)が自由な物流を妨げています。AfCFTA事務局はオンライン通報制度を導入しましたが、実効性には課題が残ります。
より広範な議題へ
AfCFTAは物品貿易にとどまりません。サービス貿易、投資保護、知的財産権、競争政策も対象に含まれています。2023年にはこれら分野の議定書が採択され、基盤整備からより深い統合への移行が始まりました。
優先分野とされるサービス業(金融、通信、交通、観光、専門サービス)は、適切な規制やデジタル基盤の活用により急速な成長を遂げる潜在力を持っています。
また、包摂的な貿易への関心も高まっています。女性主導のビジネスや若者の起業を支援する取り組みが進展しており、AfCFTAをトップダウンの政策にとどめず、草の根レベルの機会創出につなげることが重要視されています。
今後に必要なこと
AfCFTAの未来は「意志」ではなく「行動」にかかっています。次の段階で必要なことは以下の通りです。
- 枠組みの完成:残された関税表・原産地規則の交渉完了
- インフラ整備:貿易回廊、港湾、デジタル基盤への投資
- 民間セクターの活用:通関の簡素化、NTBsの削減、製造業・輸出業者へのインセンティブ付与
- デジタル貿易の推進:電子商取引議定書の迅速な実施、中小企業の国境を越えた取引促進
- 制度強化:紛争解決機関の整備、貿易ルールの執行、実施状況の厳格な監視
より大きな視野
AfCFTAは、21世紀におけるアフリカ最大の経済イニシアチブです。効果的に実施されれば、所得向上、投資誘致、貧困削減につながります。しかし、理論を現実に移す過程は複雑で、政治的な駆け引きも伴い、決して容易ではありません。
それでも、進むべき方向性は明確です。地政学的緊張や保護主義が高まる世界において、経済的統合を選んだアフリカの決断は、先見的であると同時に不可欠です。
今後の6年間が、AfCFTAを歴史的な転換点とするのか、単なる壮大な構想に終わらせるのかを決定づけます。基盤は整いました。今こそ本格的に築き上げる時です。
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